らららクラシック

チェロの奏法を改革した少年カザルス

11歳でチェロに出会ったカザルスは、その音色に心を奪われ、めきめきと上達していきました。彼の演奏の特徴は、正確な指遣いと柔軟な弓の運び。その自由で豪快、そして歌心にあふれた音色は、彼自身が取り組んだチェロ奏法の改革の賜物でした。古本屋でバッハ「無伴奏チェロ組曲」と出会い、来る日も来る日もこの曲を弾き続けたカザルス。こうして編み出された新たなチェロ奏法は、今日まで、すべてのチェリストの基本になったといわれています。

祖国スペインの人々に豊かな音楽を届けたい!

カザルスはチェリストにとどまらず、自ら指揮者となり管弦楽団を結成、熱心な指導を重ねました。それだけではなく、一般の人々が安い料金でクラシックを聴ける仕組みを作るべく、「勤労者音楽協会」を設立しました。この協会では会員自身が音楽雑誌を発行、音楽図書館や音楽学校を建て、自分たちでも演奏を楽しむようになりました。こうして、「すべての人にクラシック音楽を届けたい」というカザルスの思いは現実となったのです。

自由と平和を訴えたカザルス

1936年にスペイン内戦が勃発するとフランコ将軍の独裁政権が台頭し、自由な音楽活動は弾圧されました。自身も亡命を余儀なくされたカザルスは、「私の唯一の武器はチェロである」と、音楽を通して祖国の自由と平和のために戦うことを決心します。平和をたたえる自作の曲を国連総会の場で演奏したこともあります。そんな時、カザルスが決まって演奏したのが、ふるさとカタルーニャの民謡「鳥の歌」。世界の平和に捧げるこの曲は、聴くものの心に強く響きました。

 

もう神様ですよね。
遠藤真理(チェリスト)

遠藤真理チェリスト

 

ソリストとして活動しながら2017年4月より読売日本交響楽団のソロ・チェロ奏者に就任。2012年4月より、NHK-FMクラシック音楽番組「きらクラ!」(毎週日曜日/全国放送)でパーソナリティを務めるなど活躍の場を広げている。

 

「鳥の歌」は世界の平和に捧げる曲です。
平井丈一朗(チェリスト・作曲家)

平井丈一朗チェリスト・作曲家)

 

1957年より5年間、カザルスに師事。師と共に欧米各地で演奏旅行をおこなう。1961年、カザルスが平井氏を後継者と発表。同年、カザルス来日の際、師の指揮のもとデビューを飾る。以来ソリストとしての演奏活動は世界40カ国に及ぶ。

 

無伴奏チェロ組曲 第1番」バッハパブロ・カザルス(チェロ)
~1954年 フランス サン・ミシェル・ド・キュクサ修道院
「鳥の歌(カタルーニャ民謡)」カザルスパブロ・カザルス(チェロ)
~1971年10月24日 国際連合総会議場~