らららクラシック

とことん音楽!わたしのシューマン~仲道郁代の心にすみついた作曲家~ピアニスト仲道郁代、その誕生に大きく関わった作曲家がいます。ドイツ・ロマン派を代表する作曲家、シューマンです。「彼に青春をささげた」という仲道さん。彼女がとりこになったシューマンの魅力とは?それを伝えるために仲道さんは「トロイメライ」、「幻想曲」、「ロマンス」の3曲を選び、シューマンについてとことん語ります。

天への憧れ

仲道さんは14歳の時、名ピアニスト、ホロヴィッツのコンサートでシューマンの「トロイメライ」を聴いて涙が止まりませんでした。この体験がきっかけとなり、シューマンの世界にはまっていった仲道さん。「最初の2つの音を聴いただけで涙が流れ、とても美しい世界を見たと感じた」のはなぜなのか?後になってその理由に納得します。それは「トロイメライ」のメロディーにありました。
最初の2つの音は4つ音程が上がる「4度の跳躍」で、これは「天」や「天使」を表すと言われています。だから仲道さんは、まるで「天」のような美しい世界を感じたのです。そして、続いて現れるのが6つ音程の上がる「6度の跳躍」。これは「憧れ」を表すと言われています。「トロイメライ」は、「4度の跳躍」=「天」と「6度の跳躍」=「憧れ」が何度もくり返されます。「天への憧れ」、これが「トロイメライ」の世界なのです。

女性への憧れ

クラシック界一のおしどり夫婦として有名なシューマンとその妻クララ。しかし、交際当初、クララの父は大反対。優れたピアニストとして活躍していたクララとまだまだ無名の作曲家であったシューマンは会うことも禁じられます。そんな時期に作曲したのが「幻想曲」。会えないクララへの想いが込められた曲です。シューマン自身も「もっとも情熱的な作品」と語ったこの作品には、シューマンのクララへの「憧れ」が詰まっているのです。

永遠への憧れ

クララとの結婚に明るい兆しが見え始めたころ作曲された「ロマンス」。この曲の優しく美しいメロディーは、右手と左手の親指でハーモニーを作りながら奏でられます。このメロディーについてクララは「美しい愛の二重唱」と語ったと言います。
両手を鍵盤の上におくと、内側で寄り添う右手の親指と左手親指。二人はひそやかに愛を語り合うのです。そして、最後には、同じ音が何度も演奏され曲は終わります。「同じ音の連打」は「永遠」を表すとも言われています。シューマンは、二人の愛が永遠に続くようにと願ったのでしょうか。「永遠への憧れ」、それが「ロマンス」に込められているのです。

 

シューマンの思いを受け止めてその世界に入り込んで演奏します
仲道郁代(ピアニスト)

仲道郁代(ピアニスト)

 

昨年デビュー30周年を迎えた日本を代表するピアニスト

 

「こどもの情景」から「トロイメライ」、
幻想曲作品17(カット版)、ロマンス作品28-2