らららクラシック
オペレッタの傑作「こうもり」の楽しみ方をご紹介します。ゲストはこの作品が大好きな脳科学者の茂木健一郎と音楽評論家の室田尚子。作曲者ヨハン・シュトラウスが作り出した極上の「音楽によるコント」。聴くだけで楽しい、そして美しい音楽劇が、どのような工夫と歴史的背景から生まれたのか、解き明かします。
美しい音楽にのせて描く夫婦のだまし合い
オペレッタ「こうもり」のあらすじを、二期会公演の映像でご紹介。主人公は倦怠期を迎えた一組の夫婦、アイゼンシュタインとロザリンデ。夫のアイゼンシュタインは役人を侮辱した罪で数日間刑務所に入らなければなりません。そこへやってきたのが、友人のファルケ。ファルケはアイゼンシュタインをパーティーに招待します。アイゼンシュタインは刑務所に行くと妻にウソをついて、密かにパーティーに参加することに。実は、妻のロザリンデも、昔の恋人とヨリを戻そうとしていました。
そしてパーティーが始まります。夫のアイゼンシュタインは好みの女性を目当てに、大いに羽を伸ばします。そのとき、妻ロザリンデが貴婦人に扮装して現れます。夫は妻とは気付かず、自慢の時計で口説きにかかります。最後にはお互いの浮気がばれますが、「みんなシャンパンのせいなんだ」と酔ったせいにして仲直り。「こうもり」はそんなドタバタ喜劇なのです。
音楽でコント!?
「こうもり」の音楽は、言葉が分からなくても、聞いているだけでクスクス笑える音楽。まさに「音楽でコント」をしているかのよう。ゲストの茂木健一郎さんと室田尚子さんがオススメするのは、第一幕の「一週間もただひとりで」。ここは、刑務所に行く夫との別れを嘆く、本来は悲しい場面。妻のロザリンデは最初、寂しい三拍子のメロディーにのせて「すごく悲しい気持ちになるの」と歌います。ところが二拍子の曲に変わると妻も夫も急にウキウキ。「本心はちょっと違うよ」というのを音楽では暴き出してしまいます。「こうもり」には、こんな笑いに満ちたシーンが盛りだくさんなのです。