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フォスター名曲集 ~美しき夢を歌い続けて~

19世紀のアメリカを代表する作曲家・作詞家のスティーヴン・フォスター。誰もが知る数多くの名作を残しながら、晩年は悲惨な境遇に陥り、37年の短い生涯を終えました。フォスターは音楽に何を託したのか。彼のドラマチックな人生をたどり、名曲の魅力に迫ります。

人気歌謡作家 誕生の経緯

2歳のころにはギターでハーモニーを奏でたといわれるフォスター。クラシック音楽を学ぶ一方で、街で聴かれる様々な国の音楽にも興味を持ち、それらを吸収しながら作詞・作曲を学んでいきました。
そんな彼が、当初、作品を発表した舞台がミンストレルショー。白人が顔を黒く塗り、歌とダンスで黒人を表現する大衆娯楽です。名曲《おお, スザンナ》も、こうしたショーで披露された作品でした。ショーの音楽づくりに明け暮れる中、転機が訪れます。フォスターは、海運会社を経営する兄の依頼でシンシナティで働くことになりました。そこは奴隷廃止運動の中心地。この街に暮らす作家、ストウの小説「トムおじさんの小屋」は、フォスターに大きな影響を与えました。白人に仕え、虐げられた黒人奴隷トムを描いたその物語は、奴隷解放を呼びかけるきっかけとなりました。黒人・白人の区別なく、人間そのものの姿に目を向けるようになったフォスターは、26歳で《ケンタッキーのわが家》を発表。望郷の思いをテーマとするこの作品は、多くの人々の心をつかみ、たちまちアメリカ全土に広がっていきました。